2009年8月29日土曜日

お薬がないなら、コーラを飲めばいいじゃない。

前回のエントリで、おなかの調子が悪いことを書きました。ジェンネではなぜか、おなかの調子が悪いとき、「コーラを飲みなさい」とすすめられることが多いのです。――というわけで今回は、ジェンネでの腹痛譚とコーラのはなしです。(ちょっとはずかしい話になるので、お食事中の方はお控えくださいまし。)

前回2007年の調査では、ジェンネに越してきてすぐにおなかを壊しました。それは、田舎特有の「遠慮せずに食べなさい、ほら、食べなさいったら!」の歓待攻撃に遭ってしまったからです。つまりは、食べすぎ(食べさせられすぎ?)でした。

いくら「本当にお腹がいっぱいなんです…」と言っても、奥さんは「遠慮しないの!あなたもこの家族の一員なんだから!」と、熱く勧めてくれます。さすがに気持悪くなり、ギブアップの意をこめて「お、おなか痛いよぅ…」と訴えたら、当然のように、「コーラ飲んだら?」とのお返事が。

「…コーラですか?」「そう。おなかがいっぱいのときは、コーラ飲むといいのよ」。このときはまだ、これはこの奥さんだけが信じている独自の治療法なのだと思って、「あはは、変わったお薬ですなぁ」などと笑ってすませました。そして、日本から持ってきた新三共胃腸薬で治しました。

そしてその2ヵ月後。またお腹をこわした私。ジェンネはスイカの季節でした。旬の時期には、一玉で250CFA(約50円)くらいと格安。日本で貧しい1人暮らしの私は、スイカ一玉1000円の特売でも、高くて手が出せません。ひと夏にスイカを食べるなんて1,2回あるかないかです。

そんな私の前に、ジェンネでは50円のスイカがごろごろと転がっている!毎日買って、長屋のお隣さんと分けつつ半玉食べぇの、冷蔵庫がないので水で冷やして楽しみぃの、たまに調子にのって一玉食べてお姫様気分にひたりぃの――案の定、お腹をこわす。

うちのトイレ(というかシンプルな穴と青空天井)は長屋の4家族共同なうえに、小さいほう用(1階の中庭)と大きいほう用(2階)が別です。なので、しょっちゅう2階のトイレに行く=お腹をこわしているということは、長屋中のひとにすぐに気づかれてしまうのです。とても恥ずかしい。トイレと部屋を行ったり来たりしている私を見かねて、お隣さんが、「ミク、あんた、お腹の調子だいぶ悪いの?」と聞いてきます。そして二言目には、「コーラ飲んだら?」

――あ、またコーラ。

前回は食べ過ぎ時の消化促進にコーラを勧められ、今回は下痢にコーラを勧められ。うーん。まったく逆の症状が、同じもの、しかもコーラで治るのか?お腹がゆるいときに炭酸飲料は大丈夫なのか?と不安になり、結局、日本から持ってきた正露丸を飲んで治しました。

そしてさらに数ヵ月後。時はマルカ・フゥの旬の季節。マルカ・フゥとは、ジェンネでよく食べられる豆の一種です。ほっくりしていて甘さがあります。形もころころ丸くてかわいい。かるく塩茹でして食べます。食べだしたらなかなか止まりません。(そこにお酒もあれば、なかなかよい組み合わせだと思うのですが。残念。)

ちなみにマルカ・フゥの「マルカ」とは、マリの民族集団のひとつです。地域によってはサラコレとも呼ばれる、主に商売に従事する人びと。中世には、マリに興った諸帝国で交易にはげんでその繁栄を支え、現在では、マリを飛び出してフランスやスペイン、中国などまで交易・出稼ぎに出かけている、商魂&フロンティア精神たくましき皆さまです。そして、「フゥ」とはジェンネ語で「ぷぅ」、つまり、おならのこと。

「なんでこの豆の名前は、"マルカのおなら"っていうの?」と聞くと、大家さんやその場にいたおじさま方いわく、「形がマルカのように丸くて、食べるとおならがでやすいからだ」。たしかに、ジェンネでは、マルカの人びとは商人でお金持ち、ゆえに、農民や漁民や牧畜民に比べると、ゆったりとした体格、というイメージです。(答えてくれたおじさんたちは、皆さんナチュラルな筋肉が美しい漁民と農民だったので、もしかしたら、商人へのちょっとした皮肉を込めた冗談だったのかもしれませんが。)

「へ~ぇ、おもしろい名前があるもんですねぇ」などと相槌をうちながらも、手は止まらずにマルカ・フゥに伸びる。相変わらずむしゃむしゃと食べていると、おじさんが一言。「そんなに食べたら、フゥが止まらなくなるぞ」。そしてさらに一言、そう、「寝る前にコーラ飲んどけ」。

――でたっ、コーラ!

ガスがたまりやすいときにもコーラなのか?コーラを勧められること三度目なので、これはさすがに無視できないと思い、コーラを売っているお店(マルカが経営)に向かいました。が、夜のためすでに閉店。別に、コーラを飲まなくても、翌日におなかが張ることはありませんでした。

さて、そんなこんなで今回です。三週間くらい前から、原因不明でおなかがゆるい。食べ物にあたったのでもない。水でもない。特に強い痛みもないので、精神的なものでもなさそう。病院に行って整腸剤や胃薬を処方されるも、効果なし。

――やはりここはコーラか?

というわけで、昨夕に1瓶、念のためきょう午前中にも1瓶のんでみました。1瓶250CFA(50円)。効果はまだ出ていません。

これが、「コーラは腹痛に効く」といううわさを流して、コーラの売り上げをアップさせようとしているコカ・コーラ社の戦略ならば、わたしはまんまとはまっています。日本にいたって、コーラを飲むことなんて年に1回あるかないかなのに。特に好きでもないのに。アメリカのモンスター企業の戦略にあっさり屈した気がして、ちょっと悔しいです。

それにしても、ジェンネの皆さんの「腹痛時コーラ信仰」、どこからやってきたんだろう。ジェンネでコーラが飲まれはじめたのは、町に電気がやってきて、いくつかのお店に冷蔵庫が設置された1997年頃からだそうです。ということは、ここ10数年のあいだに定着した信仰なのでしょうか。それとも、コーラ信仰は世界的なものなのかしら。

ともかく、お腹の調子が悪いとふらふらしてとてもだるいので、明日には効果がでてほしいところです。うーん。



【写真】直立不動の少年とスイカ。安かろうがうまかろうが、食べすぎには注意。さすがにこれだけ立派なスイカだと1250CFA(250円)くらい。わたくしの次兄・心くんがマリにて2007年末に撮影。(心くん、かわいい写真だったんで、またも勝手に使わせてもらいました。ごめん。)ちなみに兄はいま、アラスカのユーコン川をカヌーでくだりおえ、カナダにいるそうです。http://whereiskokoro.blog34.fc2.com/

6 件のコメント:

  1. コーラかぁ。車酔いのときに「コーラ飲みー」とかの国では言われます。ゲップと一緒に吐いてすっきりしてしまえ、ということだそうで。豪快な治療法。
    mikuちゃん、世界の「コーラ療法」を収集して発表してください。

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  2. インドでもお腹を壊したらコーラです。
    私は昔、「お腹を壊したら水分をたくさん採らなければならないけど、インドでは水の安全性が微妙。しかし、コーラだとちゃんと蓋がされている。なので、余計なものも入っているけど水分も採れる、だからコーラが勧められる」という仮説を立てて長い間満足していました。

    しかし、コーラの国のN君は、水分説ではなく、コーラの成分説を主張しています。そもそもコーラは民間医療の薬として開発されたらしいし、なんか炭酸そのものもお腹にいいということらしい。

    まあ、彼はインドで病気になったとき、マクドナルドのハンバーガーを「ホーム・フード」と言って食べていたほどなので、慣れ親しんだものがよいということでしょうか。

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  3. タバコ吸ったら便意がくる
    の逆みたいなもんかねー?


    たまで

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  4. >wknぽにょせんせ

    車酔いにコーラ。豪快やね、ブラジリアン。(いま「ぶらじしあん」って打って変換したら、「ブラ尻案」ってなった。どんな案やろう。色っぽい)でもまぁ、ゲップと一緒にスッキリしてしまえ、というのは分かる気がする。

    >たまこちゃん

    おぉ、インドでも!たしかに「コーラは水より安全説」はインドの場合説得力ありそうやね。

    気になって電子辞書(娯楽のない田舎の調査地での、わたしの唯一のエンタテイメント)の百科事典によれば、コーラには「コカの葉(コカインは除かれている)」が入っているらしい。まぁ、天然成分ちゃぁ天然成分よね。

    ハンバーガーが病気になったときに恋しくなるホーム・フード!コーラの国の人はやっぱりi'm lovin' itなんやね。そういえば、マリの首都バマコで働いている韓国の人は、やはりキムチを漬けていました。

    慣れたもんが一番なのかねぇ。ということは、別にコーラの国からやってきていないうえに、コーラに慣れ親しんでもいない私が薬としてのコーラに投資した500CFAは、やはり無駄におわったのかねぇ。

    >たまで

    ね、あれはなんでやろうね?

    この国のどんな田舎でもコーラは見かけるけんねー。電気のない村でも、冷えてないどころか、強烈な日差しにやかれて、瓶のふたが熱くて持てないくらいのコーラが売っとったりする。ホット・コーラ。

    みく

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  5. お腹の調子はいかがですか?
    久し振りにパソコン開きました。
    何時も未来ちゃんのジェンネ便りを楽しみに開くのですが、
    愛犬・アンジーが8月30日に亡くなり、(40日程、入退院を繰り返し、最後は自宅で真由美の腕の中で息を引き取りました)何日間か抜け殻状態でした。
    昭ちゃんは、ため息ばかりついて、食も細くなり(栄養はアルコールで摂取しているので心配なし)時折「こんなに早く逝くとは」と悲しんでいます。(私が亡くなってもこんなには悲しまないでしょう)こんなことを書いてごめんなさい、楽しいことでもないのにね。
    ところで、のぶこバーバは私が子供の頃下痢の時、うめぼし入りのお湯・りんごの摩り下ろし・葛湯を処方してくれてました。
    梅干、ママ経由で送りましょか、くずも一緒に。
    まちこばーば

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  6. >まちこおばちゃん

    アンジーちゃん、ショックです。ずいぶん会ってないけん、わたしのなかでは、なんかまだ赤ちゃん犬のイメージやったし。おじちゃんおばちゃん、マユミちゃんも悲しくてなかなか元気でらんやろうけど、からだに気をつけてね。

    おなかの調子、ぼちぼちおさまりつつあります。まだ本調子じゃないけど。梅干とりんご・葛湯かぁ。こっちで再現できんのが残念。りんごは売っとるけどね。日本からこちらに荷物を送ると、2ヶ月以上かかるうえに、たまに荷物が行方不明になるので、送らんで大丈夫よ。やさしい気遣い、ほんとうにありがとうございます。

    皆さんによろしくお伝えください。

    みく

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