2009年12月27日日曜日

まさかここで。

わたしは日本で、じつによく道を尋ねられる。べつに観光案内所に勤めているわけではありません。ふつうにてくてく歩いていたり、自転車に乗って信号待ちをしているだけなのですが、そういったときに、ほんとうによく道を尋ねられるのです。日本人からも外国人からも。おおげさでなく、一ヶ月に4,5回は道を聞かれるます。あと、ホームで電車を待っていると、「つぎの電車は〇〇駅には停まりますかね?」とか、スーパーで買い物していると、「トイレットペーパーとか売ってるコーナーはどこらへんかねぇ?」といったことを聞かれる場合も、ひじょうに多い。(こういう場合、相手はたいていおじいちゃんかおばあちゃん)。こうした変形バージョンも含めると、わたしの「尋ねられ頻度」は、かなりのものだと思います。

道を聞かれる回数について友だちと話す機会なんて、なかなかありません。なので以前は、まぁほかの人もこれくらい尋ねられていてるのかな、ちょっと多い気がするけどなぁ、くらいに思っていました。でもある日、たまたま友だちと歩いているときに道を尋ねられ、友だちが「…そういえばわたし今、人生で初めて道を尋ねられたわぁ!」とちょっぴり興奮気味に言っていました。30年近く生きてきて、これまで一度も道を尋ねられたことのない彼女もめずらしいとは思いますが、これで、「ほぅ、わたしは多いほうなのか」と思ったのです。

じぶんなりにその理由を分析してみると、一) あまり人と外出せずたいてい一人で歩いているので、声をかけやすい。二) 地元は福岡市、ここ7年は京都と、比較的人口が多く、よそからも人がやって来る町に住んでいるので、道に迷っている人に会う確立も高い。三) それほど奇抜な服装や髪型をしておらず、年齢的にも道を尋ねるのに若すぎず、まあまあ近寄りやすい。四) 道に迷っているらしき人がいると、つい『どうしたんやろ?』と観察してしまうので、目が合いやすい。

といったところだと思います。もしくは、顔相学的に「道に詳しいと思われやすい顔」とか?じぶんでも不思議なのが、住んでいない町(マリに行くための中継地なので、たまに短期で滞在するパリ)を歩いているときにも、これまで何度も道を聞かれたことがあるのです。もちろんパリ在住のアジア人はごまんといるので、わたしもその一人だと思って尋ねたのでしょう。そう考えると変なことではありませんが、よりによってわたしに道を尋ねなくても。パリっ子にパリの道を聞かれても、わたしゃ通りすがりの観光客さね。

前置きが長くなりましたが、そんな道を尋ねられやすいわたしが、先ごろ、とうとうレジェンドをうちたててしまいました。先月末にマリの首都バマコに数日間滞在していたとき、とうとう、マリ人に道を尋ねられたよ!これにはわたしもびっくり!

首都ではよく国際援助団体の関係者らしき欧米人をみかけるし、中国やベトナムからの移民も増えてきたとはいえ、まだまだマリでは、「黒くない人」=よその人、という認識です。わたしは日焼けしているけど、マリの人からすれば、どうみたって白めの中国人(アジア人)=よそ者。そのわたしに、なぜ道を尋ねる?そのとき、わたししかその場にいなかったとお思いでせう。いやいや、まわりには、道を知ってそうな地元っ子らしき人がたくさんいたのです。

昼下がり、バマコの道をてくてく歩いているわたしの横に、高そうな車がすぅっと停まりました。『おいおい、こんなところで突然止まって、危ない車だなぁ』と思っていると、その車の窓が、ウィーーーンと自動で下がりました(マリではまだまだ、自動で下がる窓の車はめずらしい)。そこから中年紳士が顔をのぞかせ、「マダム、ここらへんでいちばん近いBDM(マリの大手銀行のひとつ)をご存知ですかね?」と尋ねてきた。

まさかマリでも道を尋ねられるとは!その意外性に、年配とはいえ相手が男性だったので、『すわ、これは道を尋ねるふりをした新手のナンパやもしれぬ!』とも思いました。ナンパされ慣れていない哀しいわたしはちょっと警戒。でも、どうやらこの紳士はほんとうに、急いでその銀行に行かねばならない用事があるらしい。それならなおのこと、明らかによそ者の「白い人」に聞かず、地元っ子に聞けばいいのに。

たまたまさっき通った道に小さな支店があったので、「すぐそこの通りにありましたよ。でもこの道は一通だから、ぐるっと回らないといけないかも…」と教えることができました。短く礼を言い、さっそうと去っていく車。ナンバーをよく見ると、マリではなくお隣ギニアのナンバー・プレートでした。ギニアの形がプレートの隅っこに描かれていました。マリでギニアのおじさんに道を聞かれる日本人のわたし。なんだかワールドワイド。

これから年をとっても、わたしはこんなかんじで、世界のあちこちで道を聞かれ続けるのでしょうか。聞かれても答えられないときには、こっちが悪いわけではないのにやっぱり少し申しわけない気持ちになるし、急いでいるときや体調のすぐれないときに尋ねられる、無碍にもできずかといって丁寧に教えることもできず困るし…それなりに、道を尋ねられやすい人生もいろいろあるのです。でも、わたしもよく人に道を尋ねるし、ひとに道を尋ねられるのはきらいじゃないので、よしとします。

こんど道を尋ねられたら、「なんでわたしに尋ねたんですか?」って、逆に聞いてみたい。たいした理由はないんでしょうけどね。――それにしても、マリでもねぇ…。道に迷っているひとをひきつけるフェロモンでもでてるのかしら。どちらかといえば、お年頃の男性諸氏をひきつけるフェロモンのほうをだしたいのですが。

4 件のコメント:

  1. 私も福岡に数年間滞在しておりましたが、道を尋ねられるのは一年間に二、三回といったところだったと思います。きっと優しい雰囲気が醸し出されているのではないでしょうか。

    そういえば、S先生やIさん(今はI先生でしょうか)をご存知ですか。私の記憶違いでなければ、時期は違えど同じ学び舎で学んでいたのではないかと思うのですが(専攻は違います)。

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  2. tanakaさま

    まぁ、やさしい雰囲気だなんて。うふふ、ありがとうございます。どちらか言うと、黙っていると不機嫌に見えるタイプですが、それが「わしは道を知っておるぞ、聞きたまへ」と頼もしそうにも見えるのかも。とにかく謎です。こんど本気で、聞いてきた人に尋ね返したいと思います。

    S先生やIさん(いまは先生です)には、学部を卒業して以来お会いしていません。卒業式にも出なかったという幽霊学生だったもので…。うさわに聞く限り、お二人ともお元気そうでなによりです。

    あぁ、福岡の話をしていると、とんこつラーメンが食べたくなってきました。マリに来て唯一恋しくなるものは、日本語でも寿司でも刺身でもなく、とんこつラーメンです。

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  3. あるあるー!私もよくブラジルで道を聞かれたわ。たぶん、少なくとも「噛み付かなさそうな顔」をしているんでしょう、mkちゃんも。

    ある友人が「大阪って職務質問多いな。週に2回は聞かれるよな」とつぶやいたことがあったわ。私は人生でまだ一度も職務質問を受けたことがないので、まぁ、物事の回数は人それぞれなのだなぁと感心しました、そのとき。

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  4. wknちゃんa.k.a.ぽ

    あけましておめでとうございます。

    そっかー、ぽにょも聞かれるタイプなんやね。しかもブラジルでも。でも、「少なくとも噛み付かなそうな顔」って…「噛み付きそうな顔」のひとを探すほうが難しくないかね?

    ちなみにわたしは、職務質問もよくされるよ。さすがに週2回はないけど(そりゃ、よっぽどおまわりさんの職質欲を刺激するフェロモンが出とる人やね)。マリでも何度か職質されて、一度はなんの言われもなく連行されちゃった。

    哀しいかな、ナンパされたことも、巷の若人の合コンとやらに誘われたことも、一度もありません。

    ぽにょの言うとおり、いろんな回数が人それぞれやねー。今年も、「道聞かれやすい人」同士で、仲良くやっていきましょう。

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