2009年6月20日土曜日

sweet hometown?



首都バマコから帰ってきました。およそ一週間の滞在でしたが、居候先で贅沢な暮らしをさせていただいたお陰で、どうやらちょっと太ったみたい。ジェンネに戻ってくると、奥さんたちがうれしそうに「わぁ!ミク バカ!」と言ってきます。みく、馬鹿!と罵られているんじゃありません。夏バテで痩せた私を心配していた人たちが、ぽっちゃりしたね!と喜んでくれているのです。ジェンネ語で「バカ」は大きくなる、の意です。

こちらでは、旅行から帰ってきた人に会うと、まっさきに旅先のことを尋ねるのが礼儀です。たとえ日帰りの旅行でも、数年ぶりの帰郷でも。「おかえり~。いつ帰ってきたの?バマコのお友達は元気?バマコの仕事先の人たちは元気?バマコでいっぱい食べた?バマコはどうだった?あ、でもやっぱりジェンネのほうがいいでしょ?」などなど、矢継ぎ早の挨拶。この挨拶をジェンネ語で聞くと、旅から戻ってきたなぁ、という感じがします。

たいていの顔見知りの人はわたしにジェンネ語で話かけてきますが、フランス語の人もいます。昨日、あるお兄さんからフランス語で「Bamako est doux?(バマコは甘い?)」と聞かれました。ある都市や町村を「甘さ」で判断したことはないので、不思議な感じがしました。なんで「甘い」っていう表現を使うんだろ?

直後に同じ内容の挨拶を別の人からジェンネ語でされて、「甘い」の謎が判明。Bamako est doux? は、ジェンネ語の「バマコ ア カン?(バマコは良かった?)」を彼なりにフランス語に訳したもののよう。ジェンネ語で「カン」は良い、甘い、おいしいの意味。「良い」よりも「甘い」の意味で用いられるほうが多いように思います。だから彼は、「カン」をフランス語に訳すときに、「良い」(bon)でなく「甘い」(doux)を採用したようです。彼が言いたいことをフランス語で表現するならば、Bamako est bon?と言うべきだったのです。

でも、この表現、なんだかいいじゃないか。「訳語の選択が間違ってる」だけで片付けるのはもったいない。どこか詩情が漂っているじゃないか。

 Bamako est doux? Mais Djenné est plus doux?
 (バマコは甘かった?でもジェンネのほうがもっと甘いでしょう?)

ジェンネはどちらかというと人の気質も環境もシビアだし、首都に比べてはるかに田舎です。でも、古都の誇り高きジェンネっ子にとって、わが町ジェンネはうら若き首都バマコより「甘い」のです。きっとそうなのです。

甘美な町、かぁ…。

うーん…。よそ者のわたしにとってジェンネの町は、どこかタイトに辛く、たまにほのかな甘さや優しさが顔を出し、しょっぱい思いもしつつの、それらの相乗効果でそこはかとないうまみが感ぜられ――という複雑な味。まぁその味の複雑さが、深みが、「カン」=甘い、ということなのでしょうけれど。

そんなことを感じた私のなかに流れた歌はもちろん、あの蛍の唄。♪ほ ほ ほたる 来い こっちの水は甘いぞ ほ ほ ほたる 来い♪――思えば蛍のようにふわふわとジェンネにやってきて、水が甘かったからか何なのか、結局まだここで仕事してるなぁ。やはり甘美なのか?ここは。

写真:まぁ町の気質はともかく、ジェンネのモスクのこのお姿は、文句なく甘美と言えましょう。

2 件のコメント:

  1. こちらも徐々に暑くなりだしましたよ。蒸し蒸しムシムシ。The梅雨。うーん、耐え難い!日本の梅雨は「甘く」ないねー。でも秋は「甘い」。千葉は「甘い」んかな~。まだ判断がつきません。

    返信削除
  2. >wknぽ大先生

    千葉、イメージだとあんまり「甘く」なさそう。なんやろね、味で言うと…味噌?あ、でも千葉の特産がピーナツなのは知っています。あと市立船橋高校を高校サッカーでよく聞くね。

    雨季がちょろっと顔を出したと思ったけど、まだまだのようです。その後まったく降らず。熱風の砂嵐が毎夕のように吹き荒れます。すごいよ、砂嵐。バイオエントリー。

    返信削除