2009年5月9日土曜日

フットボール狂詩曲。



こんにちは。

町の見知らぬ小僧に、憤懣やるかたない意地悪をされ、怪我しました。おかげで身体的にも精神的にも満身創痍ですが、まぁ長い人生、こういうシビアな時もあるのでせう。人類学のフィールドワークも、ある意味「修業」だと思って踏ん張るしかありません。嗚呼。

   ***

さて、きょうは世界中で愛されるサッカーの話。

マリも例外ではなく、サッカーは大人気。「フット」、もしくは仏語のボールの意味から「バロン」と呼ばれます。ジェンネのような小さな街にも各町内にチームがあり、しばしば対抗試合も行われています。町の中心のモスク前広場でも、男の子たちがペットボトルをボール代わりに遊んでいます。

サッカー好きは、子供や若い男の子だけではありません。おじさん世代も、サッカー大好き。電気のあるジェンネでは、テレビで試合観戦もできます。マリ国内の試合も中継されますが、やはり一番盛り上がるのは、
レアルマドリッド対リバプールなどの、欧州の有名どころの対戦。そうした試合は、マリで唯一のテレビ局(国営)も奮発して生中継。

欧州では、たくさんのマリ出身、もしくはマリから欧州へ渡った移民の息子世代の選手が活躍しています。
たとえば、マリ出身の選手には、セイドゥ・ケイタ(バルセロナ)やアマドゥ・ジャラ(レアル・マドリッド)がいます。セビージャ(スペイン)のカヌーテやユベントス(イタリア)のシソコは、生まれも育ちもフランスですが、マリ移民第二世代で、マリ代表選手でもあります。マリ人のおじさんいわく「親戚の子みたいなもん」(なのか?)であるこうした選手の活躍を見ることも、楽しみのひとつのようです。

先週も欧州のチャンピオンズ・リーグの試合が生中継されていました。欧州とは時差がほとんどないので、生中継はいわゆるゴールデンタイム。普段は大人気の連続ドラマ(ブラジル製)があっている夜7時ごろ。ジェンネでは数軒に1台しかテレビがないので、家にテレビがないお隣さんたちも集まってきます。

サッカーに興味はなく、連続ドラマで繰り広げられるラテンな男女の愛憎劇のほうが気になる女性陣は、「Foot en direct」(サッカー生中継)という文字が画面に出た途端に、チッと舌打ちをしながらさっさとテレビの前から散りました。残ったのは、大家さんとその友人であるおじさんたち、そして近所の男の子たち(と、それを隅っこで観察する私)。

惜しい場面やファイン・プレーがあると、普段は家長の威厳たっぷりの大家さん55歳が、「きゃぁ!」「ほぅっ!」と興奮の奇声を発して、ちょっと微笑ましい。大家さんの友達であるおじさま連中も、テレビに向かって監督ばりに檄を飛ばしています。

「ヘイヘイヘーイ、ビササ~ぁ!」(おいおいおーい、パスしろよ~ぉ!)
「ビュビュッ!モルチーノ、ジャーリ!」(シュート決めろ!ほら今だ!)

大好きな連続ドラマがサッカー中継で中止になったので、いつもはドラマ後におこなう夜の礼拝をすでに済ませた奥さんが、やや不機嫌そうにテレビの前に戻ってきました。「ちょっとぉ、あなたたち、お祈りもしないでフット?もう礼拝の時間よ」…しかしおじさんたち聞く耳持たず、嫁の小言も完全無視。

前半戦が終わり、おじさんたちは「あそこであのシュートを決めないとだめだよな」「今日のトゥーレはどうも冴えてないね」などとひとしきり前半戦を振り返った後、ようやく礼拝のため奥の部屋に向かいます。
その間テレビでは、イスラームではご法度のビール・ハイネケンのCMが元気よく流れつづけます。この対戦のスポンサーのようです。

大家さんは心なしかいつもより迅速に礼拝をすませて、いそいそとテレビの前に戻ってきました。

――嗚呼、フットボール狂詩曲。

サッカーにあまり詳しくない私には、サッカーそのものよりも、いい年して振り回されて、いつもはぴっちり行うアッラーへの礼拝の時間もちょっぴりずらしちゃう、そんなおじさんたちの意外なゆるさと憎めなさが、実に興味深かったです。

まぁ何だかんだ言って1日5回の礼拝は欠かさないのですから、彼らの神様も、苦笑いしながら許してくれてはると思います。

6 件のコメント:

  1. 怪我??うーん、人生修行やな、ホンマに。愚痴があったらメールしてこい。あ、サッカーの話題はわからないので、ふらないでね。ブラジルドラマのほうがまだわかる。

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  2. 怪我とは!!
    大丈夫か?

    サッカーはもはや万国共通ですね。
    某こーじーちゃんも
    「サッカー無しには生きていけねえ」的な
    熱の入れ様です。

    怪我と病気には気を付けてなー。

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  3. 大丈夫かい?長兄です。
    ブログやってるの昨日知りました・・。

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  4. >wknさん

    メールありがとう。もんじゃ旨かった?
    関西人としてもんじゃに喧嘩売ってきた?

    ブラジル製のドラマ、マリで大人気です。
    でもさすがムスリム90%の国、くんずほぐれつの
    キスシーンなんかは、不自然にカットされてます。
    ていうか、ブラジルの都会の女の人は、いつもあんな
    水着みたいな服でうろうろしているのですか。

    女優さんたち、だいたい乳が90%くらい見えとるよ。
    今度ぽにょがブラジル行ったら、「見えてますよ」
    って教えてあげて。多分、気づいてないよ、彼女たち。

    >いっぺいさん

    怪我はねー、まぁ大丈夫。ちかっぱ痛いし悔しいけど。
    足の爪がはがれるという、面積的には狭いうえに
    目立たんけど、歩いたり洗ったりうっかりぶつけたり
    すると悶絶ものの痛さの箇所。

    でもこれで、爪への攻撃はひとにダメージを与えるのに
    たいへん効率がよい、ということが分かったとです。
    ご心配おかけした。ありがとう、でも大丈夫。
    お仕事がんばってね。

    >ryomaくん

    妹です。上のほうの。
    えー、ブログ開設のお知らせ、メールで送ったけどね。
    送れてなかったかね。

    ということで、これがあなたの妹のブログです。
    あまり面白くはありませんが、更新されてる=元気、
    ということです。
    マミ豆ちゃんにもよろしくお伝えください。

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  5. やまだまゆ2009年5月12日 0:15

    みくさんはじめまして!
    山田眞由と申します。
    楢原一平さんに、このブログを紹介していただきました!

    まず簡単に自己紹介させていただきます。
    九州大学教育学部1年生の山田眞由です。
    ひょんなことから一平さんのお母さんとお友達になり、
    私がアフリカにとても興味があることをお話したところ、
    みくさんのお話を聞き、ぜひ繋がりをもちたい!と思い、
    一平さんに紹介していただきました!

    これからちょくちょくとお邪魔させていただくと思うので、
    どうぞよろしくお願いします!

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  6. >まゆさん

    はじめまして。とても丁寧に自己紹介してくだすって、
    なんだか恐縮です。ありがとうございます。

    このブログはあくまで身内・友人向けの自分の近況報告、
    しがない万年学生のアフリカ滞在ぐだぐだ日記です。
    だから、あまりキラキラした目で読んでしまうと、
    まゆさんをがっかりさせてしまうと思います。
    ぜひ、うっすら目を開けて見るくらいの感じで、
    読んでみてください。

    「アフリカ」っていうでっかいくくりの飢餓とか
    貧困とか陽気とかいう極端なイメージでなく、
    ふっつーのテンションの何気ない日々inジェンネを、
    時々のぞいでいただければな、と思います。

    まゆさんに言うのもなんか変ですが、
    ならちゃんのお母さんにもよろしくお伝えください。
    (小学生のときの授業参観とか以来なので、
    15年以上お会いしてないなー。)

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