調査で小さな失敗が積み重なって、ちょっとおろおろしていましたが、どうにか落ち着きました。ちょっとした疑問や不自然さを「チョット面倒だな、ま、いっか」などと思って放っておいたら、後で余計にややこしくなったりして大変ですね。改めて痛感。
さて、気を取り直して、きょうは動物の話。
ジェンネには動物もたくさんいます。牛、羊、やぎなどの家畜、にわとり、鴨などの家禽、犬、猫などのペットです。犬と猫は、日本語のペットというイメージからはほど遠いワイルドな養われ方をしていますが、犬は夜警に、猫はネズミ捕りに活躍しているようです。
これらの動物たちは、家の中庭につながれていたり、路地に放し飼いにされていたりします。「動物がいる」といちいち意識しないくらい、ごく当然な感じでうろうろしています。路地を歩くときには道をふさぐロバを押しのけなければ通れませんし、ベランダで昼寝していたらヤギにぺろっと舐められたことも。人の赤ちゃんと羊の赤ちゃんが風船を奪い合って喧嘩していたり、ぼぅっと道を歩いていると牛に追突されそうになったりもします。
さて、こんなふうに動物がごく身近にあると、動物にたいする呼びかけの言葉にもヴァリエーションがあります。例えば、霧雨、小糠雨、五月雨、天気雨、鉄砲雨など、日本に雨を表現する言葉がたくさんあるように、身近なもの、不可欠なもの、愛着のあるものには、人間は細かい差異を見つけて、それぞれを名づけるのでしょう。
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動物を追い払うとき。日本語だとすべて「しっし!」とか「あっち行け!」と言いそうですが、ジェンネでは、
ロバを追い払うときは、「ウリ!」
にわとりを追い払うときは、「クス!」
猫や犬を追い払うときは、「アス!」
動物を呼んだり群を誘導するとき。日本語だとすべて「おいで」とか「こっち来い!」と言いそうですが、ジェンネでは、
ヤギを呼ぶときは、「チャ!」
犬を呼ぶときは、「マ!」
羊を呼ぶときは、「オレ!」
同じ指示でも、動物によって言葉が違うのです。
ある日、中庭をほうきで掃いていると、ロバが隅に捨ててある残飯を食べに庭に入って来たので、追い払っていました。そのときはまだ、動物を追い払う言葉にヴァリエーションがあることを知らなかった私。いちばん耳にするクス!を使って、「クスっ!クスっ!」とほうきでロバのお尻をはたきながら追い払っていると、それを聞いた長屋の子どもたちが笑っています。「うふふ、ミク、それはロバだよ。ニワトリじゃないよ~」。
その一件で、どうやら動物によって呼びかける言葉が違うらしいということが分かったのですが、うーん、どうなんだ?動物は果たして聞き分けているのか?例えばロバとニワトリが同じ場所にいて、ニワトリだけを追い払いたいとき、「クス!」と言えばニワトリは去り、ロバは「あ、私のことを追い払っているのではないな」と思って留まるのだろうか?
そうならば、ムツゴロウさんもびっくりの動物とのコミュニケーション術です。
実験してみました。
複数の動物が同じとろこにいる時に、ひとつの動物を追い払う言葉だけを使って追い払ってみると、どうなるのか。ちょうど近所に、いつもロバとニワトリと羊が集まっている路地の一角があるので、そこで実験。「ウリ!」(ロバだけを追い払う言葉)と元気よく叫んでみたところ、
…ロバ、ニワトリ、羊、どれもぴくりとも動かない。そして私がずんずん近づいていくと、皆、「あ、このままやと踏まれてしまうがな」という表情で億劫そうにもそもそと立ち上がり、道を譲ってくれました。結局は、このままだとぶつかってしまうとか、どかないとお尻をぶたれちゃうとか、そういう危険を察知したら、すんなり去るようです。ウリ!もアス!もクス!も関係ないみたい。
ま、そんなもんですよね。
でも、こうした身近なものへの分類、とてもよいと思います。長年にわたっていろんな言葉で追い払ってきて、どうやら犬は「アス!」と言ったときにすばやくあちらに去り、「マ!」と言ったときにすばやくこちらにやって来る、そういう長年の経験から定着したのが、これらの言葉なのです(たぶん)。人間のそういった長年の経験と心の細やかさに敬意を払い、これからも、ウリ!クス!アス!チャ!マ!オレ!を使い分けていきたいと思います。(まだ覚え切れておらず、たまに「えっと、どの言葉がどれ向けだったっけ」と迷い、結局は無言で手ではたいたり、木の枝でツンツンしたりしているのですが。)
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