2009年5月4日月曜日

ラヴ・ゴイ。




ここ数日、夕方に砂嵐がやってきます。激しい風が、家のなかにまで砂を運んできます。あと一ヶ月もすれば、この砂嵐の直後に大雨が降り始める雨季です。ようやく箒で部屋の砂を掃きだしたと一息ついた途端につぎの砂嵐がやってきてりして、徒労感のなか、阿部公房『砂の女』の不気味に静謐な世界観を思い出したりします。

さて、突然ですが、ジェンネの家々はすべて泥でできているので、毎年ののメンテナンスがとても大事です。
激しい雨が家のなかに漏れてこないように、雨季の前に建物の壁や屋上、外階段などを泥でしっくい塗りします。

雨季はあと1ヶ月ほどでやってくるので、乾季のピークの今が塗り直しの時期。こうした作業を、ラヴ・ゴイといいます。ラヴはもちろんloveではなく、ジェンネ語で「泥」の意味。ゴイは「仕事、作業」。泥仕事です。

私が住んでいる長屋も、きのう塗り直しがおこなわれました。プロの泥大工さんに依頼すると高いので、大家さんは人件費を削減。自分の息子たちに塗り直しを命じました。息子やその友達ち、50度近い暑さの中の作業ですが、泥を投げあっこしてじゃれたり、お気に入りのラップ音楽を大音量でかけたりしながら、ずいぶん楽しそうに作業しています。

彼らはプロの泥大工ではないのですが、なかなか上手に仕上げていきます。ジェンネの男性は、プロでなくてもたいていの人がこの作業をできます。しかも上手に。子供たちは小さいころから泥を川べりからとってきて
粘土遊びしたり、小遣い稼ぎに泥大工の泥運びを手伝ったり、こうして親に言われて塗り直しのお手伝いをしたりしているので、泥の扱いには慣れているのです。

たいていの博多っ子が旨い豚骨ラーメンを作れるわけでも、たいていの静岡っ子が上手に茶摘みをできるわけでもないのですから、たいていのジェンネっ子の泥扱いの巧みさは、特別だと思います。

この町そのものが泥でできているので、当然といえば当然かもしれません。

泥は、彼らの町ジェンネそのもの。
彼らの町ジェンネは、泥そのもの。

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