2010年1月9日土曜日

ブテおばあさん、再び。

半年ほど前、このような記事を書きました。「おばあさん、ご冗談を。」http://mkalbumdejournal.blogspot.com/2009/06/blog-post_07.html 未読のかたは、今回のエントリを読む前に、まずこちら↑をお読みください。続編です。

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マリのお料理に唐辛子は欠かせません。マリでは、ごはんのうえにソースをかけて食べるお料理が一般的です。ソースを煮込むとき、唐辛子を杵でついて粉状にしたものや小ぶりの唐辛子ひとつが、かならずといっていいほどおなべに投入されます。色が赤くなるほどの量でも、辛すぎて子どもが食べられないほどの量でもないのですが、やはり、入っているのといないのとでは、ソースの深みが違う。隠し味ってやつです。さらに、ソースが器に盛られたときにも、かならず唐辛子が添えられます。これは、各人がお好みで辛さを調節するためです。

多くのご家庭では、奥さんや娘さんたちが、1、2週間に一度くらいの頻度で、唐辛子をまとめて乾燥させたり、乾燥させたものを杵でついて粉にしたりする作業をしています。こうしておけば、毎回の料理のしたくのときに手間も省けるし、保存しやすくなります。

先日、あるジェンネのおじさんをインタビューしに、そのおじさんのお宅に行きました。事前に約束していたのに、どうやらおじさんは約束をすっかり忘れ、友だちの家に出かけてしまったとのこと。二十歳過ぎくらいの娘さんが、「父はすぐ戻ると言ってたから、ここで待ってて」と言って、腰かけをすすめてくれました。中庭に腰かけて、おじさんを待つ。なかなか来ない。娘さんはとっても無口。娘さんの赤ちゃんは、そこらへんで熟睡中。

…ひまなので、すぐ隣で、かごいっぱいの唐辛子のへたを取る作業をしていた娘さんをお手伝い。へたをとった唐辛子を入れるかごに手が届かなかったので、へたをとった唐辛子はひとまず、じぶんのももの上に置いていきました。子どもでもできる簡単な作業。ただしこの手でうっかり目をこすったりすると、唐辛子が目にはいったも同然なので、たいへんなことになります(数か月前に体験済み。)無口な娘さんにつられて、他人の家で黙々と、唐辛子のへたをとってはももに積み上げていくわたし。

すると家の前を、ご近所に住む例の「ブテおばあさん」が通りすぎました。わたしたちが腰かけて作業している中庭にはいってきて、まずはふつうに「おはよう」と、朝のさわやかなごあいさつ。そしてわたしのももの上に積み上がっている唐辛子を見て、ブテおばあさんは、『こりゃ大変だ!』という感じの表情でこう続けます。「あらあら、あんた、そんなところに唐辛子置いて…!」

ももに唐辛子を置いたら何か不都合があるのかしら?と思い、「え、なんで大変なの?」とたずねるわたし。へた取りの手を休めないまま、隣でくすくす笑いだす、無口な娘さん。そしておばあさんが、わたしの質問に答えてくれました。「唐辛子はヒリヒリするでしょ。そんなところに積んでると、いまにブテに火がつくぞ!」そして前回同様、わたしのそのあたりを、ちょろろっと触ってきました。不意打ちをくらって「ちょっと、ばぁさん!!」と叫んで焦るも、座ったもものうえに唐辛子を置いているので、立ち上がることできず。

たしかに、ももに積んでいった唐辛子の山はいつのまにか大きくなって、ももの上のほうに、まぁつまり、ブテの付近まで広がっていました。黙々と作業するあまり、気づかなかったよ。しかしねぇ…べつにわたし、全裸で唐辛子のへた取りをしてるわけじゃないし、「まぁ大変!ブテに火がつくぞ!」って…。

そしておばあさんは、なにごともなかったように、「イェルコィ マ ボーリンディ ジャーリディ」(アッラーがきょうも美しい一日をさずけてくださいますように)という清らかな挨拶を残し、すたすたと去っていきました。さっきくすくす笑っていた無口な娘さんも、なにごともなかったように作業に戻ります。残りのへた取りはわたしに任せたようで、あらかじめ天日に干しておいた唐辛子を杵でつく作業に、黙々と取り組んでいます。

結局、インタビューをするはずだったおじさんはいくら待っても帰ってこなかったので、日を改めることにしました。でも、娘さんの家事をお手伝いできたし、「唐辛子をももの上に置くとブテに火がつくぞ」ということも学習したので、よしとします。――いやぁ、じぶんはまだまだ勉強不足っす。

2 件のコメント:

  1. 相変わらず飄々として面白いおばあさんね。
    こちら、必需品の唐辛子は、
    赤ちゃんのおちんちんの象徴です。
    男の子が生まれたら戸にかけたりね。
    ブテの火事にはお気をつけくださいませ。

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  2. ryokoちゃん

    おばあさん、こわいもの知らずやね。まぁ、どこの国にも、こういうおばあちゃんっておるよね。このおばあさん、けっこう好き。なんだかんだ言って、わたしのことを気にかけてくれとるんよね。

    韓国では、赤ちゃんのおちんちんの象徴とな!たしかに、そんな感じね。なんかかわいい。

    ブテに火がつかないように、うっかりすっぽんぽんで唐辛子のへたとりをしないように気をつけます。

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